---借りる者は、貸す人の奴隷となる---(旧約聖書)
AirBnBについて、
部屋を賃貸で借りている借主が大家に内緒でそれを転貸(又貸し)してAirBnB経営をして収益をあげてしまうと言った問題が話題になっていますが、
皆さん、いまよりももっと遥か昔から「貸している者」が悩み続けている、「借地上でのアパート経営(大家業)」に是非注目して下さい。
借地の正式名称は「土地賃貸借契約」です。
つまり借地と言うのは土地を所有しているのではなく、地主から土地を借りているだけです。
その借りている土地に借地人がアパートを建築して賃貸経営するなんて、
AirBnBの転貸問題と似ています。
地主が借地人から受領する毎月の地代より、
借地人がアパート入居者から受領する賃料の方が遥かに高額なのです。
借地人としてはかなり美味しい商売ですよね。
そもそも現代で言うところの「借地」と言うのは、その昔、「住むところが無い」人の為に、
つまり「あなたが自ら居住する為」に土地をいくつか所有している地主がその一部を貸してあげたのが始まりです。
繰り返します。「借りてあげている」のではなく、「貸してあげている」ことからスタートしているのです。
旧法借地権の問題点は、大正時代に制定された借地法が、平成の世の中においてもそのままの内容で継続されていることです。
具体的に申しますと、ひいおじいちゃん同士が締結した昔の契約書の内容そのまま、そのひ孫同士が受け継いでいるわけです。
大正時代よりももっと前から借地は存在するのですが、冒頭の旧約聖書の言葉通り、
貸す者(支配者)から、か弱き借りる者(弱者)を保護する為、借りる者が有利な法律への改良が繰り返されてきた結果、
借地人を保護し過ぎた法律になってしまったのです。
それが大正時代です。
地代を考えて下さい。
都内の住宅地における借地地代の相場は坪当り@1,000円くらいです。
30坪(100㎡)の土地の地代は、月額3万円です。
これが借地として貸すのではなく、月極駐車場として貸す場合はどうでしょう。
4台取れると仮定し、1台月額3万とれるとしましょう、月12万の計算になります。
どうでしょう、借地として貸した場合の地主の収入は月3万。
月極駐車場の収入の4分の1です。
借地人の立場からすると、月12万出さないと借りることができない土地を、昔からの名残で、月3万円で借りれているのです。
ラッキーですよね。
それに対し、地主としては、借地人に立退き戴いて、駐車場経営もしくはアパート経営したいなと考えて当然かと思います。
これが今どきの土地有効活用方法かと思います。
でも簡単に立退きなんてできないんです。
法律が、借地人を保護し過ぎてしまったから、、、
借地人ひ孫の立場からしたら、「借地の成り立ちがどうだとか、今どきそんな古い話しするなよ」と思うはずですし、
地主ひ孫の立場からしたら、「では、この古くから続いているほんの数行しかないペラ1枚の契約書の内容を、今どきの契約条文に一新しましょうよ」
と思うのです。
今どきの契約条文というのは、
「現在の相場に見合った地代の値上げ」「アパート経営するんだったら、それなりに地代の値上げ」「更新料」「譲渡承諾料」「建替承諾料」「担保権設定承諾料」「条件変更承諾料(自分が住むために利用していた借地を、アパート経営に利用変更することなどを条件変更と呼びます)」を然るべき時にしっかりと支払う旨のルールが定められている条文です。
古い契約書には、利用目的を「建物所有を目的とする」とだけしか書いていないタイプのものがあります。
「建物」は広義過ぎます。その建物の使い方が問題なのです。
このタイプの昔の契約書が地主の痛いところであり、借地人の有利な点であります。
地主はその「目的」を、「あなたが住むための建物所有を目的とする」に変更したいのです。
このように契約書を一新してしまうと、借地人は今までより一気に立場が弱く(正確には地主と平等に)なってしまう為、大抵の場合が拒否します。
拒否したっていいんですよ、だって、目的の詳細や、細かい承諾料などの定めなど無い、昔から続いているペラ1枚の契約書の内容は現在でも、有効なのですから。
つまり、借地人は、古い話なんかするなよと言っておきながら、古い契約内容のまま継続したがるわけです。
地主は、借地の成り立ちの古い話をしながら、新しい契約書にしたがるわけです。
どうでしょう、借地人と地主の温度差が激しすぎて、話が咬み合いません。
昔からアパート経営をされている借地人に対しては、いまさらそれを拒否することはできないのは仕方がないことかと思います。
ですが今現在、借地人が自分が住むために借りている借地を「アパート経営用地に変更したい」もしくは「自分は老人ホームに入るから空家になるのでこの古い家をリノベーションして誰かに貸したい」といった場合は、
もともとは「そこであなた(の一族)がアパート経営をする為」に土地を貸したのではなく、
「そこにあなた(の一族)が住む為」に貸したものですから、
昔の契約書に「建物所有目的」とだけしか記載されていない場合であっても、「借地の利用方法を新たに変更し、そこでアパート経営(既存の建物のまま賃貸を含む)するということは拒否します。
ですが、それなりの承諾料、及び、アパート家賃収入の何割かを地主にまわしてくれる(つまり地代の値上げをしてくれる)のであれば許可します。お互いが譲歩し合いましょう。」
といった決着方法が「今どき」なのであると私は思います。
借地の問題は根深いです。
私が不動産業を続けていく限り、「借地人」と「地主」どちらの立場の気持ちも把握しながら一つでも多くの借地トラブルを解決に導いていきたいものです。