それは朝の出来事だった。
大浴場で朝風呂に入り、さぁ、あがろうと脱衣所でからだを拭く。
服を着ようとする。
棚の、一番右の上から三番目にあるはずの、私の青いパンツが無い。
間違いない。浴衣はあるのに、場所を間違えないようにと目印的に置いていた、
私のあの青いパンツだけが無い。
まわりにはおっさんしかいない。事件だ。パンツを盗まれた。
一応フロントの受付嬢に盗まれたことを報告し、まずは爆笑され、
一応、脱衣所に備え付けられている防犯カメラを
30分だけでいいのでチェックしてくれと伝える。
私にはわからないので、上の者に確認しますと奥へ消える。
上の者が出てくる。
「下着を盗まれたA-winさまー」と、大声で私を呼ぶ。
そこにいた客全員の視線が私に集まる。
恥ずかしい。
結局、脱衣所の防犯カメラはダミーとのことで、泣き寝入り。
あぁ、大阪って、怖いところだなと宿を後にし、
これもなんだか恥ずかしいのだが、
初めて訪れる戎橋にてグリコの看板を写真におさめ、
一路、品川の実家へ。
他では味わえないご馳走、母ちゃんのご飯を食べ、
旅の疲れを吹き飛ばす。
歩き過ぎてかかとがとても痛いものの、
大きな怪我や事故もなく、
「34歳、国内一人旅」を終えることができたことを
巡礼してきた神様仏様に感謝し、
それから、このような機会に恵まれたこと、
私を支えてくれる皆さま、
全ての事柄に感謝し、
長いようであっという間の旅を終えた。