【借地コラム(長文)】
「借地」というのは、借地人の立場からの呼称であって、「借りてる土地」のことです。
対する地主の立場からの呼称は「貸地(=底地)」と言い、「貸してる土地」のことです。
お金の世界に例えますと、借地人は「お金を借りてる人」であって、地主は「銀行」です。
借地の「地」の字を「お金」に変換しますと、「借金」です。
世の中には「貸している人」よりも「借りている人」の方が圧倒的に多いので、
「貸地」や「貸金」という呼称よりも、
「借地」や「借金」という呼称が一般的に飛び交っています。
「借金契約」の正式名称は「金銭消費貸借契約」と言います。
「借地契約」の正式名称は、「土地賃貸借契約」と言います。
「借地権」とは、その土地を「地主から借りて使用できる権利」のことを言います。
その土地を「所有している」のではなくて、「借りている」のです。
よく、「借地人の方が強い」と主張する借地人がいますが、何が強いのでしょうか、、、?
国は「相続税」を算出する上で、ルールを作らなければなりません。
相続税を算出する上で国が作ったルールが、
「路線価」という土地の値段の決め方と、路線価における「借地権割合」です。
その土地が面している「道路の値段(=路線価)」によって、
相続財産計算上のその土地のお値段が決まります。
その土地が面している「道路に紐づけされた借地権割合」によって、
相続財産計算上のその土地の借地権割合が決まります。
大体の道路において、「借地7割:底地3割」もしくは「借地6割:底地4割」
といった借地権割合が多いです。
「借地7割:底地3割」というのは、
相続財産計算上のその土地のお値段が「1億円」だった場合、
相続税を課すにあたって、
借地権を相続した人(借地人)は7千万円の資産を相続したと「みなされ」、
底地権を相続した人(地主)は3千万円の資産を相続したと「みなされ」、
相続税が課されるのです。
その土地を「実際に使っている」のは借地人であり、
その土地の「所有者」である地主は、自分の土地なのにその土地を使えません。
自分が所有している土地を自分で使えないというのは、かなりのハンデです。
お兄ちゃんのおもちゃを弟が奪って遊んでるのとはわけが違います。
国はどちらから多くの税金を取るか考えた場合、
その土地を実際に使っている借地人から多く取るのは当たり前のことです。
また、世の中には「地主」の人数より「借地人」の人数の方が遥かに多いのですから、
人数が多い方の税金を高めに設定したほうが税収は増えます。
この路線価における借地権割合を勘違いし、
「借地人のほうが7割強い」と主張する借地人が数多く存在します。
何が強いのでしょうか?
ただただ、相続税を支払う割合が多いだけですよ?
それからもう一つ借地人が勘違いしてしまう原因は、
「借地権を高いお金を出して買う」という行為です。
借地人は地主から土地を借りている対価として、地主に地代(=賃料)を支払います。
この地代、とても安いんですよ。
なぜ安いかって?
その借地契約(土地賃貸借契約)は、
明治時代あたりからスタートしてしまっているからです。
明治時代あたりから永遠と「名義変更」が繰り返されているのです。
イメージ沸きにくいかと思いますが、「借地権の売買」って、
土地賃貸借契約書に記載されている「借主の署名捺印欄に記載される名前」が、
ただただ変更されるだけなのです。
土地賃貸借契約書の条文などは原則的には変更されず、
次の借地人にそのままの内容で引き継がれてしまうのです。
地主さん、可哀そうじゃないですか?
そこに目を付けた人がいるんですよね。
「おっ、こんなに立地が良い場所なのに、地代が昔のままだからかなり安い賃料で土地を借りて家を建てれるぞ!」
そうやって、その土地を「安く借りれること」に価値を見出し、借地人が勝手に「売値」を決め、
借地権という「土地を借りてる権利」が売買されるようになってしまったのです。
さて皆さん、地主がその土地を返して欲しい時って、どうすれば良いと思いますか?
答えはですね、「借地権を買わないといけない」んです。
おかしくないですか?
自分が所有している土地なのに、買わないといけないんですよ?
地主さん、可哀そうじゃないですか?!
レンタカーに例えてみて下さい。
あなたがレンタカー屋を経営していて、お客様に車を貸しますでしょ?
その貸した車を返して欲しい時、お客様から車を買取らないといけないんですよ?
おかしくないですか?!
しかしながら現代の借地人も悪気はないと思うんです。
借地人は、前の借地人に高いお金を支払って借地権を買っているのですから、
自分の土地だと勘違いしてしまっている人が世の中にはたくさん存在します。
その勘違いが、「借地人の方が7割強い」なんて勘違い発言を生み出してしまうのです。
そんなおかしな状態が続いているのが、現代の「借地の諸問題」なのです。
兎にも角にも、相手に物申すときには、まずは自分の立場と、相手の立場を良く理解した上で、
折衝に臨むべきですね。